強い粘り気や細長い形状が特徴の「自然薯」は、大和いもや長いもと同じ「やまのいも」の一種です。古くから虚弱体質にも良いといわれている自然薯には、どのような魅力があるのでしょうか。ここでは栄養のほか、おいしく食べるためのポイントなども紹介します。
じゃがいもやさつまいもなど、いも類の多くは加熱調理して食べるのが一般的です。しかし、自然薯などのやまのいもは、そのまま生食できることが特徴です。その秘密は、消化酵素であるジアスターゼやアミラーゼを多量に含むことにあります。これらの消化酵素が働くことによって、生食してもでん粉が消化されるのです。また、特徴的な「ぬめり」は、血糖値を下げるといわれているデオスコラン等によるものです。自然薯は健康へのさまざまな効能があるといわれていて、滋養強壮剤としても用いられてきました。
自然薯と長いもは見た目がとてもよく似ていますが、その栄養成分にはいくつかの違いがあります。まず、長いもは100gあたり約82gの水分が含まれているのに対し、自然薯は約68gと少ないことが特徴です。この水分の少なさが、自然薯の強い粘りにつながっています。また、エネルギーも65kcalの長いもに対し、自然薯は121kcalと倍近くあります。そのほか、鉄・ビタミンCなどの体に必要な栄養も、わずかながら自然薯の方が多いことが魅力でしょう。
自然薯の一般的な食べ方に、すりおろして「とろろ汁」にする調理法があります。自然薯をタワシなどで皮が残る程度に洗い、皮ごとすりおろすことで、自然薯ならではの野趣あふれる風味を楽しむことができるでしょう。自然薯はおろし金ですりおろすこともできますが、すり鉢で直接おろすと、より滑らかな食感になります。すりおろした自然薯に和風だしやしょうゆ、みりんなどを加えてよく混ぜ合わせれば、とろろ汁の完成です。好みで卵黄を加えたり、青のりを振ったりしてもおいしく食べられます。ちなみに、とろろ汁は「麦飯」との相性が抜群です。とろろ汁を食べる日は、いつもの白米に押し麦を加えて炊いてみるのも良いかもしれません。
揚げ物や汁の実など、和食に使用するイメージが強い自然薯ですが、実は和菓子の「かるかん」も作ることができます。和菓子といっても材料を混ぜて蒸すだけの簡単なレシピなので、家庭でも作ることが可能です。皮をむいてすりおろした自然薯100gに上新粉120gと砂糖120gを混ぜ、クッキングシートを敷いた型に入れて蒸し上げます。粉の量は自然薯の水分量によって調整してください。もっちりとした食感が特徴の上品な仕上がりです。